こんにちは、板橋ステーション歯科の歯科衛生士の長谷川です。
年の瀬に近づいてきましたがコロナの影響でしょうか、あまり年末年始のイベント感がない気がします。
今年は里帰りをしない予定なので、お年玉を貰いに行けず息子は落ち込んでいます(笑)。
さて今回は、歯周病と全身疾患の関係性についてお話ししたいと思います。
「健康的と言えない生活習慣」が関係しておこる病気、生活習慣病。
実は歯周病も生活習慣病の一つなのです。
その歯周病が全身に及ぼす影響についていくつかあげていきましょう。
糖尿病
歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。
実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。
歯周病菌は腫れた歯肉から容易に血管内に侵入し全身に回ります。
血管に入った細菌は体の力で死滅しますが、歯周病菌の死骸の持つ内毒素は残り血糖値に悪影響を及ぼします。
心臓疾患・脳血管疾患
歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粘性のある沈着物)ができ、血液の通り道は細くなります。
プラークが剥がれて血の塊が出来ると、血管の細いところなどで詰まりやすくなります。
その結果、脳梗塞や狭心症、動脈硬化などを引き起こします。
歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になり易いと言われています。
血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります。
呼吸器疾患
肺や気管は、咳をすることで異物が入らないように守ることができます。
しかし、高齢になるとこれらの機能が衰えるため、食べ物などと一緒にお口の中の細菌を飲み込み、その際むせたりすると細菌が気管から肺の中へ入ることがあります。
その結果、免疫力の衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症してしまいます。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、歯周病菌であると言われており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが重要になります。
骨粗鬆症
閉経後骨粗鬆症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのが、エストロゲン(女性ホルモン)の欠乏です。
エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯を支える顎の骨ももろくなります。
また、歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ、歯周炎の進行が加速されると考えられています。
多くの研究で、骨粗鬆症と歯の喪失とは関連性があると報告されています。
また、骨粗鬆症の薬としてよく用いられるビスフォスフォネート製剤(BPP製剤)というのがあり、これを服用している方が抜歯などをした場合、周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。
歯周病でぐらぐらしているから自分で抜く、などということは絶対に行わないようにしてください。
妊娠
一般に妊娠すると、ホルモンバランスの変化により歯肉炎(妊娠性歯肉炎)にかかりやすくなるといわれています。
妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなることが指摘されています。
これは口の中の歯周病細菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないかといわれています。
その危険率は実に7倍にものぼるといわれ、タバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高い数字なのです。
生まれてくる元気な赤ちゃんのために、確実な歯周病予防を行いましょう。
この他にも、腎炎や関節炎、メタボリックシンドロームなど、さまざまな疾患との関連性が報告されています。
余談ですが、歯周病は人類史上最も感染者数の多い感染症のひとつとしてギネス・ワールド・レコーズにも掲載されているそうです(゚Д゚;)!!!
生活習慣病の多くは、発病してもかなり進行するまで自覚症状がほとんど現れないという共通点があります。
そのため予防や治療というアクションを起こせない、または起こさない人が少なくありません。
「健康的と言えない生活習慣」、逆に言えば、生活習慣次第で発病を防ぐことができる病気という言い方もできます。
毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、定期的に検診を受け歯周病の予防をし、全身疾患の予防につなげていきましょう。
それでは皆様、よいお年をお迎えください。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。